根抵当権の元本確定と債務者の相続
債権者(銀行など)が、ある人に金銭の融資をする際、基本的には1回の融資をして、その金銭が回収できなくなった時に、担保にとった不動産を競売して債権の回収をはかるというのが抵当権です。基本的には1回の貸し付けです。住宅ローンの貸し付けが代表例でしょう。
これに対し、根抵当権というものがあります。法律では「一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する」と規定されています。
債権者が、債務者との取引において予め取り決めていた取引につき、融資しては債務者から返済を受けることを繰り返し、極度額という枠の範囲内で、債権が担保されるという権利(民法での物権)です。
一般に、反復継続して金銭の貸し借りをする際に利用され、ビジネスに利用されるものです。
この根抵当権という権利は、法律上一定の事由があった際には、「元本が確定」し、以降は極度額の範囲内で、残存債務を担保することになり、抵当権と同じ性質になります。その残存債務が返済されない際には、根抵当権の対象となる不動産を競売して債権の回収をはかることができます。
元本が確定する一定の事由には、いくつかありますが、予め契約時に定めた確定期日が到来したというのが代表例だと思います。この他に、根抵当権の債務者に相続が開始してから6ヶ月以内に相続の登記と相続による指定債務者の合意の登記をしないと根抵当権の元本が確定するというものがあります。
そして、この登記をしないと、被相続人が相続開始前に負担していた債務だけが根抵当権によって担保され、債権者がその相続人と相続開始後に行った取引についての債務が担保されないことになります。
法律がこのようになっているため、根抵当権の債務者に相続が開始した時には、債権者との取引を継続するのか、根抵当権をどうするのかを踏まえ、変更登記が必要な場合があります。
根抵当権は、元本が確定しているかどうかを常に考えていないといけないので神経を使います。