遠方の法務局に相続登記の申請をしたところ、登記原因証明情報の記載内容に不足があるとの連絡が入りました。
相続人数人の遺産分割案件でした。普段、近隣の法務局に法定相続情報証明書のみのPDF添付をした上で無事に処理されているので、今回の指摘に疑問を感じました。
担当の方と電話で協議しましたが、法定相続情報証明書の他に、遺産分割協議書もPDFにて添付送信してください、とのご指導がありました。
相続関係説明図のケースであるものの、過去の日司連の通達(法務省民事二課長回答)によると、相続を原因とする登記申請における登記原因証明情報添付の趣旨は、申請するための要件が整っていないにもかかわらず、申請の受付の順位を確保するというような架空の登記の申請がなされることによって、本来先順位で登記を受けることができる者の利益を不当に害することを防止する点にあるとのことです。
かかる趣旨から、この通達では相続関係説明図を作成、添付した場合には、架空の登記になるわけでもないので、遺産分割協議書も一緒に添付をする必要はなく、簡易な添付書類で構わないとの結論を導いています。
今回のこちらからの申請では、相続関係説明図ではなく法定相続情報証明書を添付しました。この申請も当然ですが、申請するための要件が整っていないにもかかわらず受付の順位を確保するというような架空の登記申請などではなく、真正な登記申請です。
つまり、法定相続情報証明書の添付の場合でも、相続関係説明図のケースと同様に扱っても結論に違いはないのではないかと考えました。
もっとも、かかる通達をよく読むと、「(遺産分割)、(相続放棄)等の具体的な内容を記載した相続関係説明図を・・・申請情報と合わせて提出した場合」という具合に詳細な特定がなされていますので、この点からすると法定相続情報証明書の添付だけでは、冒頭の通り「内容に不足があ」り、遺産分割協議書も合わせて添付しなくてはならない、という結論になるのでしょうか。
私としては、上記趣旨に重きを置けば、相続関係説明図のような詳細な規定を要求するまでもなく、法定相続情報証明書のPDF添付だけで実務上問題ないのではないか、と考えています。
要は、順位番号を確保するだけのためなど、不適切な登記申請がなされなければ良いという判断でOKなのではないか、と考えました。