被後見人本人が居住している(居住していた)不動産(居住用不動産)を売却する場合、居住用不動産の売却許可の審判を家裁から出してもらいます。取壊しの際には、取壊しの許可審判を出してもらいます。
さて、その申立書を書く際、なぜ売却や取壊しをしなくてはならないのか?について、しっかりした記載が必要になると思います。
単に、「住まないから売ります。」ということであっても、その不動産を管理維持していくために相応の費用がかかり、過大な出費になってしまう、ひいては本人を害するなどといった理由があるはずで、様々な理由があると思います。相応の検討が必要になると思います。
不動産の処分を始める際、私がいつも気になるのは、その後の本人の行き場、居所(「きょしょ」ではなくあえて「いどころ」と言った方が本人に対し柔らかいニュアンスがあると思います。)です。
本人が現在、施設や病院に入所していても、本人が認知等の状態を回復し、自宅に復帰できるようになることも考えられます。不動産を売却、取壊してしまうと、「慣れ親しんだ自宅がない」ということになってしまいます。本人が認知状態から回復するケース自体、あまり考えられないと思われますが、もしも自分が被後見人本人の立場であることを考えれば、自分の生まれ育った家が売られて、なくなってしまったとしたら、ショックでしょう。
以上の心理的な抵抗感もあり、不動産を売却、取壊するケースでは、少々慎重になってしまいます。
また、以前、他資格の先生からこう言われたことがあります。「司法書士が後見人になると、すぐに不動産を売りたがる。」あまり良いニュアンスでは受け取れなかったことを覚えています。
あまりそうは言われたくないですね。
もちろん、残念ながら本人が回復、復帰する見込みがない場合で、長年その不動産の処理問題が解決できないでいる等の理由がある場合は、即座に売却手続きに入るべきでしょう。