私たちをとりまく環境・・・過払金を有する方の減少と多重債務問題の沈静化
もう皆さんは過払金という言葉はご存じですね。
数年前であれば、借入先の業者から過払金を取り戻すだけで債務整理が可能な案件が多数存在しました。たとえ他に多数業者から借り入れた負債があったとしても、1社もしくは数社から取り戻した過払金で他の負債を返済すれば、きれいに債務が整理できました。
案件によってですが、今でも取引につき過払金が生じないわけではありません。しかし、生じたとしても少額なうえ、過払金が生じる案件が次第に減少傾向にあることは紛れもない事実です。
これは、最高裁判例を経て、改正貸金業法により上限金利に規制がかけられたことで、業者の金利も法定金利の範囲内に設定され、高利の貸し付けがなされなくなったことによります。
さらに改正貸金業法により総量規制が導入され、一定額以上の金銭の借り入れができなくなったことで多重債務問題自体が沈静化しました。
多重債務問題が陰を潜め、 過払金の生じないケースが多くなってきている・・・。債務を整理する際に比較的容易な解決ができなくなっている・・・。
時代は変わった。これが率直な現実です。
◆相談
まず第1に、早めに専門家に相談し、債務整理をして生活を安定させます。我々司法書士が介入することで業者からの取立自体がストップします。依頼者の方が心身共に落ち着くことができることは間違いありません。
◆生活の見直し
第2に、徹底的に生活を見直し、考え方を180度変革させることです。
非常に当たり前の話ですが、借金額がかさみ返済できなくなっているということは、ご自身の現在の収入では、現在の生活自体全く維持できていないということです。
「これから数ヶ月頑張れば収入も上がるから大丈夫だ。」「契約が決まれば来月は数十万円入ってくる・・・。」それは本当に実現する見通しあっての発言なのでしょうか?現在あまり良くない状況であれば、仮に、たった今からよっぽどな努力や改革をしたとしても、残念ですがそんなに早く物事は好転しません。
さらに、残念ですが我が日本は、頑張ればお金が入ってくるような右肩上がりの時代は終わりました。
会社に行っていれば何も心配しなくても給料が入る、遅刻もなくまじめに会社に行っていれば会社や上司は認めてくれる。何とか生活の見込みが立つ、本当にそうでしょうか?まじめに行っても会社の給料は上がらないどころか、現実は下がっていくばかりです。
こんな社会情勢の中、負債を負ってしまった方は何をすべきなのでしょうか?それは、収入に見合った支出をすべく、意識を変え、「支出」ひいては「生活」を徹底的に見直すことが急務の課題になると思います。
「生活」を徹底的に見直す作業と同時並行して、債務整理という法的整理を実行していくことが生活を立て直す道筋になるのです。
それでは、債務問題を解決する手法にはどのようなものがあるのでしょうか。
1.過払金返還請求(訴訟)
消費者金融に払いすぎたお金(過払金)を取り戻すことができるかもしれません!
今から10年程度前から消費者金融と取引があった皆さんは、毎回返済する時に消費者金融に高い利息を支払っている可能性があります。このような取引形態の場合、業者に利息制限法を超過して支払っている金額を元本に充当する再計算をすると、払いすぎていた金銭により元本が返済されたこととなり、さらに払いすぎたお金が返ってくることになる場合があります。これを「過払金」と言います。
この「過払金」が生じる場合、消費者金融等への借金がなくなるのはもちろんのこと、消費者金融等からお金を取り戻すことができることになります。
この過払金は過払金返還請求訴訟により回収します。(場合により訴訟をせず「訴訟外」で回収するケースもあります。)回収した過払金が多額になる場合で、他の業者の残債務がある場合は、回収した過払金をその残債務の支払に充当することで、債務を整理することができます。
ただし、和解交渉もしくは訴訟提起をすることで取り戻すこととなりますので、消費者金融が自動的に本人にお金を返してくれるのではありません。
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2.任意整理(裁判外手続での分割弁済の和解)
残債務が残る時には分割弁済します。
利息制限法上の上限金利で再計算をしても残債務が残ってしまう場合で、月々の支払により3年で総債務額を返済できる見込みがあるときは、業者と、依頼者の代理人となった司法書士が裁判外手続で和解交渉(俗に言う示談)し、和解契約書を交わすことで手続が終了します。
以後は、完済するまで月々決められた金額をきちんと返済しなくてはならなくなります。通常、和解契約締結後2回支払を怠った時には一括して返済しなければならなくなります。
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3.自己破産
残債務総額を3年(36ヶ月)で割った金額を、月収の一定範囲内の金額(ひとつの目安として手取月収から家賃を引いた金額の3分の1)で分割返済することができるかどうかを検討します。この計算によっても分割返済できる見込みがないのであれば、(地方裁判所への)自己破産の申立を検討します。
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4.個人再生
地方裁判所への個人再生の申立をすることで、残債務総額を5分の1から10分の1にカット(最低弁済基準額100万円)し、カットした金額を3年間で支払っていく債務整理方法です。継続的な収入が見込める個人の債務者が、自己破産という形で負債を精算するのではなく、カットされた残債務が完済された時に債務がなくなるという形で解決する、返済型の解決方法です。
以上、借金問題の解決方法は主に、過払金返還請求(訴訟)、任意整理、自己破産、個人再生、という4つの方法があります。残債務を弁済していくことができるのであれば、任意整理や個人再生申立を選択し、やむを得ず弁済できないのであれば自己破産を選択することとなります。
相談される方個別の借入状況や生活状況を十分把握した上で、どの方法により解決するかになります。
なお、我々司法書士が債務整理に着手すると、その後5年間から7年間、消費者金融やクレジット会社などから新たな借金ができなくなります。
また、債務整理後には、月々決められた金額をきちんと返済しなくてはならなくなる場合があります。
今までのように「消費者金融」「クレジット会社」からの借入に頼った生活はできなくなります。問題解決のためにはこれらの制約も覚悟してもらう必要があります。
司法書士 小林潤一