我々認定司法書士が債務整理に着手し、業者から提出された債権届、取引履歴をもとに、取引につき利息制限法の法定利息による引直計算をします(債権調査)。債権調査の結果、その残債務総額を3年(36ヶ月)で割った金額を、月収の一定範囲内の金額(ひとつの目安:手取月収から家賃を引いた金額の3分の1)で分割返済することができるかどうかを検討します。この計算によっても分割返済できる見込みがないのであれば、自己破産を検討することになります。
自己破産とは、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に自己破産の申立を行い、地方裁判所から破産手続開始決定、免責許可決定をもらうことにより、税金等を除いた負債をすべて帳消し(チャラ)にしてもらう手続です。いわば法律による債務の踏み倒しです。
破産手続開始決定、同時廃止と管財事件
地方裁判所に自己破産の申立をすると、まずはじめに「破産手続開始決定」が出されます。そして、ほとんどの申立案件につき「同時廃止」という決定がなされ、申立人に金銭的負担もなく手続が終わってしまいます。
この「同時廃止」とは「現在持っている財産を換価、配当したとしても、債権者に案分(債権額に応じて)配当できる金銭が生じないので手続きをやめましょう。(手続きを廃止しましょう)。」ということを意味します。地方裁判所から「同時廃止」が出た段階で、申立手続は実質的にほぼ終了してしまいます。
一方、申立前に、財産的な価値がある不動産、自動車などを所有していた場合は、地方裁判所の判断により「管財事件」に移行することがあります。この「管財事件」とは、「財産を換価して債権者に案分(債権額に応じて)配当して手続きを終わらせる。」手続きのことです。まとまった財産があるのであれば、少なくとも所有財産の価値程度は債権者に配当すべきであって、タダでは負債をチャラにはさせないという趣旨であろうかと思います。
管財事件に移行すると、地方裁判所の指定した弁護士が管財人に就任し、配当手続を進めます。その手続の中で、申立人の財産が換価され債権者に金銭が案分配当され手続が終了することになります。土地、建物など申立前のめぼしい財産はすべて失うことになります。
自己破産の申立をする人は概ね前者の「同時廃止」に該当することが予想されます。
こんな人は自己破産
負債総額が数百万円とかなり大きい方
残債務が数百万円とかなり大きい方が対象です。(ただし法令上負債総額の上限はありません)。
収入の範囲内で残債務を返済できない方、収入が不安定な方、無職で収入がない方
残債務があまりにも大きく、現在の収入の範囲内では返済ができそうにない方、やむを得ない事情で収入が不安定になってしまった方、無職で収入がない方が債務問題を解決するには自己破産を選択することになります。
他の解決手続として任意整理や個人再生がありますが、これらは手続後に返済が前提となる手続です。残債務額が大きい方の場合であっても有職の方であれば個人再生の選択の余地があると考えられますが、収入が不安定な方、無職で収入がない方につきましては、自己破産を選択することになると考えられます。
手持ちの財産がない方
自己破産では、財産的価値がある財産(高価な車、不動産、高価な貴重品)をお持ちの方の場合は、事案にもより管財事件として処理されますが、手持ちの財産がないのであれば、同時廃止として手続が終わってしまいます。その場合には自己破産をしても生活にほとんど影響がありません。なお、家財道具などは失うことはありませんのでご安心ください。
司法書士の自己破産申立
司法書士は自己破産申立書をはじめ、裁判所に提出する書類全般を作成することができますが、あくまで裁判書類作成支援という業務が中心であり、代理人としての活動が法令上認められていません。そのため、「本人が司法書士の作成した書類を裁判所に持参して本人自身が申し立てる」申立形式をとることになります。
よって、地方裁判所への申立時及び裁判官との破産審尋の期日、裁判官との免責審尋の期日には、当職同行の上、依頼者本人様も地方裁判所に3回程度(裁判所の運用により異なる)出頭してもらうことになります。
なお、上記、裁判所での申立、期日といっても、それぞれ実質的には1時間もかからない手続であるため、依頼者本人様にもそれほどの負担がかからず手続が終わってしまいます。
これに対し、弁護士は依頼者の代理人になることが認められているため、申立等の際には弁護士が単独で申立を行うことができ、通常は免責審尋期日に一度、依頼者本人も地方裁判所に行く程度で済む取扱がなされているようです。
これら法律上、実務上の運用の差異により、本人が裁判所に出向く必要が多い代わりに、相場として司法書士の手続報酬のほうが弁護士報酬よりも安くなっているのでしょうか。
自己破産について 事務所からお伝えすること
「毎月支払えない程借金の額が大きくなってきた。払えない。どうしよう。取立もひどい。自分ではどうすることもできない。親に肩代わりしてもらうような額じゃないし。どうしよう・・・。」長期にわたりこの状態が続き、相談する時には問題がひどくなっている。おまけに健康も害している。こうならないためにも、とにかく早めにご相談ください。
ご相談される方によくあるのは、「少しずつ返済していけば完済できる。」「これから一生懸命頑張れば自己破産なんてしなくても大丈夫だ・・・。」
自己破産が嫌だというお気持ちはわかりますが、変な意地をはるのはやめましょう。今までのご自身の人生の大事な問題を、そうやって先延ばしにしてきたから今の状況があるのではないですか?
さらに、「おまとめローンなどを利用し、他から借りてきて負債を一本化すれば解決できる。」「他業者から借り入れて返済すれば借金を解決できる。」という方もいらっしゃいます。当たり前ですが、借金を借金で解決することは最終的な問題の解決にはなりません。
自己破産は、不動産など財産的価値のある手持ちの財産をすべて手放さなくてはならないものの、租税公課を除き借金をきれいに片づけることができる最終かつ最良の方法です。支払不能に陥った方を救済するための最後の砦です。
自己破産は決して恥ずかしいことではありません。自己破産をした方のうち、自己破産をしたことを「後悔した」という方を聞いたことがありません。「自己破産」と聞くと悪いイメージが浮かぶ方も多いと思いますが、現代社会ではそうではありません。
自己破産をしても戸籍や住民票に記載される訳ではありませんし、選挙権や被選挙権がなくなる訳でもありません。
返済の見込みのないほどの借金を抱え、日々悩まされている方は、一大決心をして、自己破産により債務を帳消しにして、人生をリセット、再スタートをしてみることを検討してみてください。自己破産後にしっかりと生活設計を整えれば良いだけの話です。