本日はちょっと専門的な話題になってしまいます。
建物を新築した時、はじめになされる不動産の登記は「表題登記」というものです。登記簿(登記事項証明書)の上部に「表題部」という部分があります。ここでの登記は、建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積、所有者を、土地であれば所在、地番、地目、地積、所有者を公示する登記です。この登記は土地家屋調査士の先生にお願いします。
表題登記が終わったら、権利に関する登記として「誰が所有者であるか」を公示するための「所有権保存登記」を申請します。所有権保存登記は、原則として、表題部に記載された所有者を申請すればいいだけなのであまり難しくありません。すぐに登記申請できます。難しくないといっても、この登記がされていないと、以後、その不動産を売却する際に必要となる所有権移転登記等ができませんので、必ず申請が必要な登記です。
さて、今回取り扱ったのは非常に特殊な登記でした。土地についての所有権保存登記はほとんどの土地についてなされているはずですが、世の中には、まだ土地の所有権保存が未了の不動産があります。
表題部の登記(所有者A)はあるものの、A名義の所有権保存登記がなされていない土地がありました。その土地を長年管理占有してきたBがいました。Aはすでになくなっており、Aの相続人Xもなくなっていました。実質上所有者のように管理占有してきたBは、当該土地の固定資産税も支払ってきたので名義も自己名義にしたいと考えていました。
そこで家裁でAの相続人Xに相続財産管理人を選任してもらい、Xを被告として時効取得を原因として所有権移転登記を命じる給付判決を得ることができ、判決も確定しました。さて、不動産登記はどうするかということになりました。
以前ブログで書いた記憶がかすかにあります。不動産登記の大原則とは、不動産の物件変動の過程を忠実に登記簿(登記事項証明書)に反映させることでした。その物件を、AからXが相続してBが時効取得したのであれば、原則として登記申請の方法は、Aの保存登記→Xへの相続登記→Bへの時効取得による移転登記という登記申請をしなければいけません。
しかし、今回の案件ではAの相続人の戸籍はあるものの、AとXの住民票が収集できなかったこともあり、登記申請に必要な書類が揃わないことになりそうでした。そのため「例外として何か簡単に登記申請できる方法はないか?」をずっと考えていました。登記先例や不動産登記法の条文で検討した結果「名案」が浮かびました。
不動産登記法第74条1項2号「所有権を有することが確定判決によって確認されたもの」→この条項を使えばいけるのではないか?と思いつきました。
そこで、74条1項2号及びその条文を補足する先例を検討し、「表題部A名義からB名義に一発で所有権保存登記が可能なのではないか」との見解を法務局に協議したところ、登記官が認めてくれました。
完了した登記簿(登記事項証明書)によると、表題部の所有者はAであるものの、権利の登記では所有者がBとなっています。このような登記申請を実践できたことに達成感を感じることができました。