地方裁判所での本人訴訟

司法書士は訴額(訴訟によって争う額)140万円以下の民事事件につき、簡易裁判所での訴訟代理人になることができます。といっても司法書士であれば全員この代理権を有するわけではなく、法務省の研修を受け、法務省の簡易裁判所認定考査試験に合格しないと代理権が与えられません。この代理権を与えられた司法書士は「認定司法書士」といいます。実際のところ単に「司法書士」と言ってますが・・・。
この訴訟代理権は140万円以下の民事事件についての簡易裁判所での代理権に限定されていますので、140万円を超えた地方裁判所が管轄を有する民事事件においては司法書士は代理人として活動することはできません。
そこでどうするかですが、司法書士は裁判所、検察庁に提出する書類の作成が認められています(司法書士法第3条)ので、司法書士が訴状、答弁書を作成、地方裁判所に提出し、初回期日の期日請書や送達場所の届出等、概ねの事務的な段取りを行った上で、地方裁判所に出廷する期日に法廷には本人に出廷してもらいます。法廷では司法書士が歌舞伎などの「黒子:クロコ」として傍聴席で本人にサインを送って操り、裁判手続を進めていくという方法を執ることがあります。我々は簡易裁判所には訴訟代理権があるので、これを俗に「地裁の本人訴訟」とか言います。
先日、この本人訴訟をして参りました。事件番号の呼び出しの後、地裁の原告席に依頼者本人に座ってもらいます。この時私は傍聴席の最前列の本人に一番近い場所に座っています。裁判官によっては事実上の代理人である司法書士に色々な質問をしてきますが、あくまで原告は代理人のつかない本人訴訟なので、裁判官によっては本人に質問してきます。昨日の裁判官は、本人に質問をしてきて、司法書士を完全シカトする裁判官でした。
依頼者本人と予めブロックサインを決めておき裁判官の質問に答える準備をしますが、概ねは私が傍聴席で話したことを本人もそのまま話してもらう形で訴訟進行していきます。
過払訴訟などは立証のため証人尋問、本人尋問が必要なわけではなく、ある程度準備書面など書類のやりとりで訴訟が進行していきます。そのため本人訴訟をすること自体それほど難しいものではないと思いますが、裁判と聞いただけでアレルギーをおこす方もいるので、本人訴訟をするかどうかは依頼者本人とよく話しあって決めています。依頼者本人の社会経験が十分豊富であれば概ね本人訴訟に耐えうると思います。
この方だったら大丈夫だと思い本人訴訟をしたものの、法廷で一言も話せなかったという方がいる一方で、事前の打ち合わせをよく理解し、法廷で「はい。」「お願いします。」などと平然と回答し、私としっかりアイコンタクトをとり難なくこなす方もいます。
それを見ながら「もしも私が本人として臨んでいてもこんな上手くできなかっただろう。見事だな。」と感心してしまいました。
 

PAGETOP