判決、和解による登記

Aさんの所有する土地をBさんに売ったとします。B名義の所有権移転登記がなされることになります。後日、この売買契約を無効としてAさんがB名義の所有権移転登記の抹消を求め地裁で訴訟をしました。その後、双方の代理人弁護士の和解が整い、所有権移転登記の抹消登記手続をすることになりました。
通常の登記手続では、登記名義を失うB(不利益を被る人)と登記名義が戻るA(利益を得る人)が共同して登記申請手続をしなくてはならないというのが不動産登記法の大原則です。これを不動産登記法では「共同申請」の原則といいます。
しかし、いくら和解が成立したといっても、それまで訴訟上対立し気分の悪いBさんに、「共同申請なんだからあなたも登記手続に協力してくれよ。」と要求するのは難しいでしょう。
そこで例外として、裁判所での判決や和解等で、一方当事者に登記手続を命じているのであれば、他方当事者が単独で登記申請手続をすることができる、とされています(不動産登記法63条)。一般に「判決、和解による登記」といいます。
判決、和解による登記を受託し、登記手続を代理申請するたびに、この「判決、和解による登記」は全く良くできた制度だと感じます。訴訟で争った相手方が手続に協力してくれるはずもないですから。
さて、判決、和解による登記をする際に注意しなくてはならない事があります。現在の登記名義人が住所を変更しているかどうかを必ず確認することです。上記の例でいえば、登記名義を抹消されるBが、その後現住所を変更しているかどうかです。住所を変更している際には、住所変更の登記をしない限り所有権抹消登記は受理されません。住所変更の登記をしなくてはいけない理由として、登記手続的には、たとえ名前が同じであっても現住所と登記簿上の住所が異なるのであれば、登記簿上の住所と現住所を合わせない限りそれは別人である、という不動産登記法の考え方があるからです。何とも面倒ですが、法務局は書類で審査するしかなく、虚偽の登記がなされないためにも時系列に従い忠実に手続を取るためしょうがないのでしょう。

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