昨日と本日の新聞紙上で「大阪の債務整理専門の司法書士法人が、司法書士資格のない職員に債務整理をさせた非弁活動の疑いで、大阪弁護士会から告発を受けている。」というニュースが出まわっています。これについて考えてみたいと思います。
弁護士及び、法務省から認定された簡易裁判所等訴訟代理権のある司法書士でない限り、他人の訴訟事件、和解等の法律事務を取り扱うことはできません(弁護士法72条)。これに違反すると、弁護士等でない無資格者が法律事務を行った → 一般的な言葉として「非弁活動」をしたことに該当し、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金になってしまいます。(弁護士法77条)
派手なテレビCMをガンガン流し、債務整理の案件を大量に受託する弁護士法人や司法書士法人が多くなってきています。皆さんも、夜テレビを見ていて「弁護士事務所」のテレビCMをご覧になられた方も多いと思います。
あのような法人事務所は、1ヶ月に何百件?もの案件を受託し、ベルトコンベアーのように案件を処理していきます。案件が非常に多いので、弁護士や司法書士が多数在籍しても、すべて資格者で処理できるはずもありません。そのため、どうしても無資格の事務員に任せることになりがちなことが予想されます。
今回の告発の詳細な内容はわかりませんが、事務所の現状として、和解の最低ライン等だけ先生から指示をもらい、和解の電話を先生に代わって無資格の事務員が担当しているということもやっていたのでしょうか。特に、債務整理の経験が長い事務員には、資格もないのに依頼者を指定して丸ごと任せていたことが考えられます。今回告発された事務所の執務状況が社会的に許容される範囲を超えていたため、弁護士会も調査に乗り出し非弁活動として告発されたのでしょう。
本来、消費者金融等の業者と交渉し、業者を訴え、過払金の返還交渉を行い、依頼者と面談や打ち合わせをする業務は、弁護士や司法書士自身が全部責任を持ってやらなくてはならないものです。通常の事務所では、依頼者との面談相談、受任通知(取立を止める通知)の作成、発送、業者との交渉、過払金の請求、残債務の返還交渉、訴訟活動等々・・・交渉以外の事務手続もすべて司法書士の指揮のもと責任を持ってやっていると思います。
また、通常の事務所は、派手な広告のもと大量受託しているわけではありませんし、ビジネスとして儲かればいいという執務姿勢ではなく、どうしたら依頼者の生活再建や更正をはかることができるかを考えていることと思います。
債務整理を単純にビジネスの道具として捉えるほんの一部の流れが、今回の告発という結果をもたらしたのでしょう。同じ司法書士として残念でなりません。