認知症の方や知的障害者の方は、自分の財産を自分で管理することができないのが普通です。欲しいものを買ったり、自分の医療費を病院で支払う等々はできません。このような人たちに対し、法律で後見人を付け保護するのが法定後見制度です。
この「保護する」という言葉がキーワードです。
「後見人」と聞くと、こんなことを言う人がたくさんいます。「俺が親父の後見人になってやるよ!」これはつまり意訳すると「俺が親父の後見人になって財産を管理してやるから、親父の財産全てを俺に預けろよ!」ということでしょう。さらに本当の意味は「俺が預かった親父の財産は、俺が俺の自由に使う。」という意味でしょう。
後見制度は断じてそういう制度ではありません。
被後見人(後見される人)の財産を管理するとは「実費他必要経費以外は財産を使わない、後見人の都合で財産を使うことはできない、財産を保全する、理由もなく財産を動かさない」という管理です。さらにその管理状況は、年に1回程度、家庭裁判所の厳しいチェックを受けることになります。
後見人が別段の理由もなく家裁の事前許可もなく、日当、報酬等自分の都合で勝手に財産を使ってしまうと必ず説明を求められます。
これは刑法上、業務上横領罪になってしまいます。(程度にもよりますが)金額が大きい場合、検察からの起訴、公判手続を受けることになってしまいます。つまり後見人が「被告人」として刑事裁判を受けることになります。
しかも、勝手に使った金銭は他人のお金です。民事上は不法行為です。まずは家裁から全額の返還を求められます。
後見制度を活用しても、自分の都合で財産を使えることにはならないのです。全くその逆で、財産が完全に凍結されてしまい、財産の自由がきかなくなる制度だと思ったほうが正しいと思います。